Winnyの初期ノード情報に関するプライバシー

昨日のWinnyファイル発信者のIPアドレス特定ツールについて考えているうちに新たな疑問がわいてきた。Internet Watchの記事によれば、

WinnyRadarは、Linuxシステム上で動作するソフトウェア。クローラーエンジンはネットワーククライアントとして動作するため、インターネットに接続できる環境であれば、どのような場所にも設置できるとしている

とのことだ。


これは次のような動作と考えられる。


まず問題1として上記の宣伝文句について。
Winnyプロトコルクライアントとして動作する以上、Winnyプロトコルを使った通信を行う。Winnyパケット制限が複数のプロバイダによって課されている昨今では「インターネットに接続できる環境であれば、どのような場所にも設置できる」というのは嘘になるのではないか。
プロバイダが正規*1Winny通信であるか、WinnyRadarが発行したパケットであるかを見分けることは原理的に不可能だ。WinnyRadarの通信であっても、Winnyパケット制限に引っかかる。すなわち「Winnyパケット制限が課されているプロバイダではWinnyRadarは使用できない」ことになるはずだ。


問題2として、初期ノードの問題がある。
Winnyプロトコルクライアントとして動作するためにはWinnyネットワークに接続する必要があり、Winnyネットワークに接続するためには、必ず初期ノードが必要となる。WinnyRadarのユーザはどのように初期ノードを入手するのだろうか? ユーザに初期ノードを入力させるような仕様は考えにくいから、WinnyRadarが起動時にどこかに初期ノードファイルを取りに行くのかもしれない。その場合はフォティーンフォティ技術研究所もしくはその関係会社が管理するサーバに置くことになるのだろう。


この場合、常に『freshな』初期ノードを提供するためにフォティーンフォティ技術研究所は日夜最新のノードを収集し、初期ノードとして提供することになるのだと思う。初期ノードをノード管理者に無断で「公開」することは問題ないのだろうか?


nynodeなどノード管理者が自発的に登録したノードを公開する分には問題ないだろう。この場合、ノード管理者は自分のIPアドレスが晒されることを了承したとみなされる*2。しかしノード管理者と全く関係がないフォティーンフォティ技術研究所が無断で公開してよいのだろうか。初期ノードとはすなわち、少なくとも最近Winnyノードとしての動作が確認されているIPアドレスのことであり、該当IPアドレスは最近Winnyを実行したことがあるという関連付け情報をも含有する。


これはプライバシー上懸念されなくて良いのだろうか。
また場合によっては特定の初期ノードに意図しない負荷をかける結果になるかもしれない。この辺の懸念について十分な考慮があったのだろうか。


疑問だ。

*1:法律的、倫理的にどうかという意味とは別に、本来のP2PとしてのWinnyパケットとして正規かどうか

*2:多くの人がWinnyを解析している現状では、ハッシュによるノード情報は簡単にIPアドレスに逆変換できてしまうと考えるべきだろう。nynodeでノード登録することにより、IPアドレスが晒されることになることについての説明はnynodeにあるべきだと思うし、その上で「合意する」のチェックボックスやボタンが必要なのではないかとの危惧はある