同人ソフトの収集・保存

先日のネタ記事にMSX研究所日記さんからトラックバックを頂いたので反応してみる。


MSXと言えば、懐かしいなあ…。何を隠そう、一番最初に親に買ってもらった(と言うかねだったわけでもないのになぜか買ってきた)のが実はMSX2で、MSXがその一時代を終えるまで相当使い倒した記憶がある。
...というのはどうでもよくて。


同人ソフトの保管・活用に関してはコミケット事務局側で何ら考慮されているようには見えず、絶望的かな…という印象を持っている。
CA1672 - マンガ同人誌の保存と利活用に向けて −コミックマーケットの事例から− / 里見直紀,安田かほる,筆谷芳行,市川孝一 | カレントアウェアネス・ポータル」でもソフトの「ソ」の字も見当たらない。*1
わずかばかりの言及として

現在、回収の対象としているのは、・・・(中略)・・・d) メディア類(ビデオテープ、カセットテープ、フロッピーディスク、MO、CD、DVD等)、・・・(中略)・・・
その他、約500箱の同様のダンボール箱に、各種メディアの見本誌(前述のd)が収納されている。

...と、保管量の記載があるのみだ。


この中でも、同人誌でさえ、【保存――装丁上の特質がもたらす脆弱性】にあるような劣化の問題があるわけで、全体のごく一部に過ぎない同人ソフトの保存など考えも及びもしないという状況が予想される。


コミケの歴史からいえば、同人ソフトはかなり後発のジャンルだし、事務局幹部の多くが同人ソフトについての基礎的知識、保存特性をよく理解できていないと思われるが、所詮は膨大な同人誌の中に間借りしている弱小異質ジャンル。それも仕方がないのかもしれない。
見本誌全体の中でも、C73までの全12,857箱のうち約500箱。わずか3.9%を占めるに過ぎないのだから。(しかも、これは純粋なソフト以外の音楽、ビデオなども含まれている数字)


ただせっかく独占的に収集できる立場にある(あった)のだから、こうして収集してきた成果を腐らせることなく、もっと頑張って保存に力を入れてほしいものだ。本は温度湿度を保った環境で保存すればそこそこ劣化せずに維持保管できると思うけど、ソフトはそうはいかないからなぁ…。
かろうじてメディアが生きていたとしても、メディアを読み込む側のハードウェアが残存しているか疑わしいし、存在したとしてもハードが完動するかとなると更に疑わしい。年を経るに従ってこの状況は悪化はすれども良い方向には決して向かわない。


特に、MSX研究所日記さんも言及しているが、同人ソフトを頒布するためのコストは相当に低い。というか工夫次第でいくらでも低くできる。FD全盛の頃はアキバで売ってた無保証ノーブラの激安FDとかを利用していたサークルはかなり多いはずだ。そういったFDは、時間が経過したら読めなくなるのはもとより、そもそも品質が悪くて購入直後、デュプリ直後でも既に読めないものがあったりするほどの低品質っぷりであった。そしてサークル側もそういう品質を分かっていたうえでなお使っていた節がある。


そういう劣悪媒体が見本誌全体のどれほどを占めるかは想像もできないが、保管分の相当数が既に認識されなくなっている可能性がきわめて高い。


一刻も早く、現時点で救えるものだけでも、ディスクイメージ化して安全な媒体に保管しなおす作業が望まれる。のだが…。


利用(公開)については、作者の同意を得る作業はもちろん重要ではあるが、それは同人誌の公開でも事情は同じであって、その点では第三者がやるよりはコミケット事務局がやる方が理解は得られやすい可能性がある。そもそも全サークルについて同意を得るなどと言うのはどだい不可能なわけで、同人誌図書館のようなものが実現することになるとしたら、サークル側の意見は尊重しつつも、文化的価値を優先することにならざるを得ないだろう。原則公開、サークル側から申し出があったものについては非公開に、といった形が妥協点かもしれない。
同人ソフトについても同様のスキームが使えるだろう。


ただし連絡先問題についてはたしかに大きな課題かも。
完全に連絡先が不詳になっては困るだろうから、墨塗りしてしまう訳にもいかないだろうし…。その点同人ソフトの場合はデジタルデータなので、同人誌よりは何とかしようはあると思う。

*1:唯一、「アンソロジー」の中で一文字だけ「ソ」が出てくる