ユーザの思考力を奪ってはいけない

本とかWebのレビュー記事などで、自分のコントロール下にないソフトウェアのインストール手順を詳細に紹介することは、非常に危険な行為だと思う。
実行する環境によってメッセージが違ったり、あるいは紹介記事を書いた時からソフトがバージョンアップするなどしてインストール手順が予告なく変わる場合もある。


『License Agreementの画面が出るので「agree」を押してください』
『ユーザーアカウント制御画面が表示されるので「許可」または「続行」を押してください』
『セキュリティ警告画面が出るので「はい」を押してください』

これらは無責任な発言に過ぎる。
本来ユーザが責任を持って画面に表示された内容を確認して先に進むかキャンセルするかを決めねばならないのに、あたかもそんな手順は必要でないかのように、何も考えずにボタンを押しさえすればいいような説明はユーザの思考を停止させる非常に無責任な行為だ。
そういう操作に慣れてしまって、この画面が出たら無条件でこのボタンを押せばよい、という条件反射のような間違った刷り込みを起こしかねない。


例えばURLをタイプミスして正規のソフトを装ったマルウェアをダウンロードさせられてしまっていたらどうするのか。画面には「Cドライブをフォーマットします。よろしいですか?」と表示されているかもしれない*1。ユーザは画面に表示されていることなど見ずに説明どおり「続行」を押してしまうかもしれない。マルウェアに実行権限を与えてしまうかもしれない。悪質ActiveXをインストールしてしまうかもしれない。


そうなった場合責任を取れるのか。
紹介記事を書くというのは親切心から出た行為であっても、そういう危険が潜んでいることは留意しておくべきだ。


どうしても書くという場合は少なくとも例えば次のような表現にすべきだろう。
『License Agreementの画面が出るので内容を確認し、同意できる場合は「agree」を押してください』
『ユーザーアカウント制御画面が表示されるので自分が実行した操作であることを確認して、問題なければ「許可」または「続行」を押してください』
『セキュリティ警告画面が出るので発行元が正規のものであることを確認したうえで、問題なければ「はい」を押してください』


ユーザマシンに何かをインストールさせる行為は最終的にはユーザ自身の責任に帰せられる。その責任を伴う行為を思考停止に追い込み、強要してはいけない。


...と、Windows ダンプの極意のp.40を読みつつ思った次第。

まずは、ダウンロードしたmsiパッケージをダブルクリックして起動してください。

1.お馴染みの同意する画面が出ますので、「agree」を選択して進みます。

*1:もちろん、現実にそんな親切なマルウェアは存在しないが