サンクリ問題

祭が終わった頃にようやく騒ぎに気付くあたり、アンテナの低さが露呈する。
同人誌イベント「サンクリ」参加サークルの個人情報が流出 - ITmedia News


これは考えうる中で限りなく最悪に近いケースだ。
一番最悪なのは日本最大規模の同人イベントであるコミケでの情報漏洩であるが、さすがにコミケの規模になるとスタッフの数も他とは比べ物にならず、必然的に情報のアクセスには制限がかかっているはずだからこういう事故が起こる可能性は他のイベントに比べれは比較的可能性は小さいだろう(と考えたい)。


サンクリはイベント規模ではコミケに次ぐ2番手グループに間違いなく入っていると言っていいだろう。だからこの規模のイベントで起きてしまったのは全く不幸というしかない。弱小イベントで起きてくれればよかった、というのは不謹慎であるけれども、流出規模が小さい範囲でとどまっているうちに情報管理の重要さに気付いて大手イベントの対策がなされるのであれば、考えうる範囲で被害が最小にとどまったと思われる。


イベントの個人情報管理というのは多くの人にとって盲点だったと思われる。が、あちこちで指摘されている通り、表社会では普通の会社人が隠れ同人でエロをやってたりするので、そういう二面性を持った情報という意味では巷で起きている大企業の流出事故よりもよほどたちが悪い情報だ。


流出してしまったという事実そのものが既に大変な問題であるが、サンクリはもとより、その他中小特に零細規模のオンリーイベントに与える影響を考えると、その被害は計り知れない。同人界そのものが萎縮してしまうことが危惧される。
イベント運営側は個人情報の管理にこれまで以上に気を使い、お金を使わなければならない。*1
サークル側も、運営に疑心暗鬼となってイベント参加を敬遠しがちになる。
申込サークル数が減少すればイベント側の負担は更に大きくなり、イベント開催を断念せざるを得ないケースも増えると思われる。まさに負のスパイラルだ。
開催会場側も貸す相手の敷居を上げるということもあるかもしれない。もしそんなことになれば会場確保からして既に難しくなる。


同人イベントは基本的にはスタッフもボランティアベースなのでサークル参加の申込情報は個人情報であるとはいっても対策費用や手間などの運営コストを考えるととてもじゃないが厳重な管理は望めないだろう。一昔前はそれでも大きな問題にはならなかった。
しかしWinnyが登場して、キンタマウイルスが現れた時点で世の中の情報に関する流れは大きく変わった。同人界には関係ない話だという油断があったのか、そもそも油断どころか考えも及んでいなかったのかもしれない。


クリエイションは本来望んだかどうかに関わらず、現状として法人化している事実があるから、その言い訳は既に通用しなくなっている。
個人情報保護の取り組みについて」のページは日付から言って法人化した際に作成したと思われるが、今となってはその文言は空しい。

個人情報の安全管理

クリエイション事務局は、個人情報の紛失・漏洩等に関して予防措置を講じ、個人情報の保護に努めます。

「当該イベントにてスタッフ作業を行っていた元スタッフが、個人情報を含むファイルを、2002年頃より断続的に無断で自宅に持ち帰っておりました」とする報告を読む限り、必要な予防措置どころか何らアクセス制限がかかっていなかったと推測できる。


流出しているのは〜SC33までということと、C71関連の情報も入ってたりするあたり、CPSの元スタッフが流出元っていう可能性が高いんだろうな*2CPSと袂を分かって株式会社クリエイションとして法人化して上記ポリシーを作った際に、それまでの元スタッフが持ち出した情報を徹底的に破棄するというのをやるべきだったのだろうがそれをやっていなかったのが恐らく裏目に出たのだろう。同じことはコミケにも言える。*3


間違いなくサンクリは同人界の歴史に名を残すことになった。もちろん汚点であるが。
前回10周年記念でお祝いムードだったことを考えると、直後にこういうことが起きたのはまったく不幸なことだ。お祝いムードで浮かれていたということでもなかろうが。残念ながら今後の展望どころか、未来が鎖されてしまった。また1から出発することになろうが、失われた信頼を取り戻すのは難しいだろう。
とりあえず4月のサンクリ43は中止決定とのことだが、おそらくイベントとしては管理体制を整えた後で継続するのではないか。いつのことになるのかは分からないが。ただしこれまで同様のサークル数を期待するのは難しいだろう。そもそもこういう重大インシデントを起こした団体に対して会場側が場所を提供してくれるかどうかという問題もある。
そうなるとイベント開催はもしかしたら二度とないということもあるかもしれないが少なくとも事故の事後対応責任として準備会組織は今後も継続していかなければならない。しばらくはその対応だけでも手一杯になるだろう。対応費用もどうやって調達するのか。*4


経緯の報告と、当面の疑問に対する答えは2月のサンクリで事務局から明らかにされることを望みたい。


レヴォが消えて久しい今、関東のオールジャンルでは最大級のサンクリには、このまま消滅というのは何としても避けていただきたいと切に願わずにはいられない。
道は険しいだろうが頑張って立ち直ってほしい。

*1:これまで以上、とは言っても本来掛けてこなければいけなかったコストではある

*2:Winnyでの流出元の検証は高木先生あたりにぜひやってほしいな…そんな余裕あればだけど

*3:コミケの場合はスタッフの個人情報?らしいので流出規模は小さいが問題の根っこは同じ。たまたまこの元スタッフのアクセス可能範囲がスタッフ情報だけだったというだけで、サークル情報にアクセスできる立場のスタッフだったならよりひどいことになったろう。元スタッフに対する情報管理、破棄が徹底されていないのは結局コミケも同じということ。

*4:サンシャイン展示ホールの利用規定によると、開催3ヶ月以内のキャンセル料率は100%(つまり開催しなくても全額負担)である。開催3ヶ月より前のキャンセルなら60%の料率で済んだところ、タイミングの悪いことに4/12開催予定だったサンクリ43の3ヶ月前は1/12であり、わずかに数日問題発覚が遅かったために損金が膨らんだ。サンシャインの展示ホールはA123ホールが2,772,000円、Bホールが1,640,100円、Dホールが2,335,410円。申込サークルには返金するといっているからつまり6,747,510円+その他諸経費は丸々事務局が負担(損失処理)しなければならない。どうやって資金繰りするつもりなんだろう? それともキャンセルせずに別のイベントに又貸しでもするんだろうか?