同人誌のコモディティ化

最近の書店委託状況とか、同人アンソロとか、こういう流れを見るにつけ、商業と同人の境が薄れてきているというか、あいまいになっていると強く実感する。ある程度棲み分けた方がメリハリが付いていいと思うんだけど。
ここ数年で乱立した4コマ雑誌などは、名を連ねるのはいわゆる同人作家が大半であり、プロとアマの垣根も低くなって(或いは無くなって?)きていると感じる。この手の4コマ雑誌の連載は一応、一般書店ルートなので商業デビューと言えるのか?


コミケでの企業ブース拡大もやはり、商業と同人の境を薄める一つの要因になっているだろう。もはや企業ブース目当てでコミケに参加し、同人スペースなど見向きもしないと言う参加者もかなりの数に上るのではないかと言う気がする。そういう人たちは一昔前のディープな同人ヲタとは異なり、2ちゃんやニコ動から流れてくるような、言わばライトヲタとでも言うべき存在ではないかと思う。
コミケットとしての立場は「来るもの拒まず」でありそういったこと全てひっくるめて容認しているようであるが、個人的にはやはり違和感を覚える。両者の温度差はかなりあって容易には交じり合わないだろう。


昔はイベントに参加して同人誌を手に入れることが一種のステータスだった。決められた日、決められた場所で、朝早くから入場待機列に並んで。どういう順番でお目当てのサークルを巡回するか試行錯誤して、そして開場後は、ひたすら並んで、やっと目的の本を手に入れる。あるいは手に入れられないかもしれない。
こういうことがリアルな感覚として、実感できることが同人ヲタとしての価値観であり、参加者でしか分かち合えない特別なものであった。


最近は、街中の書店*1で、日を選ばずいつでも、極めつけは場所さえ選ばず通販でだって買えるようになって、そう、これは同人誌のコモディティ化とでも言うべきか。同人誌というもののレアリティが明らかに薄まってきている。


同時に、以前は同人誌など手にも取らなかったような人が、街中で(以前よりは)容易に手にできる状況が生じている。先日エロパロ禁止を掲げていたブログ主もそのような状況を危惧してのことであることはうかがえる。


もちろん、イベント会場でしか買えない同人誌、グッズもあるし、逆にイベント限定をアピールして希少価値を高めようとしているサークルだって存在する。
しかし全体として、着実に、コモディティ化は進行している。もはや止めようも無い現象なのだろうか。一昔前の同人界を覚えている者としては寂しさを感じる。一昔前のアキバを知る者が現在のアキバに対して感じる寂しさと同じ感覚だと思う。

*1:といっても現状はヲタク系書店に限られるが