RSS全文配信は著作権侵害なのか?

個人的には、RSSの仕組みで配信している以上著作権侵害になる可能性は低いのではないかという気がする。(0ではない)


そもそも完全に個人利用の場合(第三者非公開のRSS)は除くとして、公開型のRSSについて考えてみる。


まず単純に全文配信という観点で見ると、RSS著作権法第三十条に定めるところの、自動複製機器を使った複製であると見做せるように思える。従って第三十条が適用されると解釈される場合は、私的使用であっても(公衆にRSSが公開される前提では)RSSでの全文配信は認められないことになると思う。

(私的使用のための複製)
第三十条 著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。
  一 公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器(複製の機能を有し、これに関する装置の全部又は主要な部分が自動化されている機器をいう。)を用いて複製する場合

著作権法


ただRSSは「引用」のような性格もあると思う。「引用」という観点で考えると、RSSでは記事全文とセットとなる形で、必ずブログタイトルやオーナー名、フィード元URLが記録される。記事全文を著作物の引用と考えると、これらの情報は著作物の出所の明示と考えることができるため、引用と言う行為そのものは著作権法に則った方法で適切に行われていると解釈できると思う。これらの情報が無いものや、不当に改竄されている場合でない限りは。
問題は、この場合の引用が「公正な慣行に合致する」かどうか、そして「報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内」であるかどうか、だろう。


少なくとも部分配信の場合は「公正な慣行」として多くの利用者の暗黙の了解が得られそうな気がする。
全部配信が多くの利用者にとって「公正な慣行」と受け止められるかどうか。これは難しいかもしれない。人によっては感情的に嫌、という向きもあろう。


RSSフィードという行為が引用の目的として正当だと見做されるのかどうか。これは司法の判断を仰ぐ以外に判断できなさそう。

(引用)
第三十二条 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。

著作権法

(出所の明示)
第四十八条 次の各号に掲げる場合には、当該各号に規定する著作物の出所を、その複製又は利用の態様に応じ合理的と認められる方法及び程度により、明示しなければならない
一 第三十二条、第三十三条第一項(同条第四項において準用する場合を含む。)、第三十三条の二第一項、第三十七条第一項、第四十二条又は第四十七条の規定により著作物を複製する場合
  二 第三十四条第一項、第三十七条第三項、第三十七条の二、第三十九条第一項又は第四十条第一項若しくは第二項の規定により著作物を利用する場合
  三 第三十二条の規定により著作物を複製以外の方法により利用する場合又は第三十五条、第三十六条第一項、第三十八条第一項、第四十一条若しくは第四十六条の規定により著作物を利用する場合において、その出所を明示する慣行があるとき。

2 前項の出所の明示に当たつては、これに伴い著作者名が明らかになる場合及び当該著作物が無名のものである場合を除き、当該著作物につき表示されている著作者名を示さなければならない。

著作権法, 部分強調はこちらで追加

RSSの場合はフィード元URLを辿ることで著作者名が明らかになるので、2項の条件を満たしていると思う。


ただし、法律論は別にして現実的にはRSSで全文が配信されてしまうとフィード元URLを全く見に行かなくなってしまうこともありえるわけで、その場合は経済的、あるいはその他有形無形の不利益(知名度、アクセス数など)が発生するのは確かなんだよね。感情論だけではなくて。
そのあたりの事情が問題を複雑化させているのかもしれない。