新常用漢字表

文化庁 | 「「新常用漢字表(仮称)」に関する試案」に対する意見募集の実施について
常用漢字表(仮称)のパブコメ募集が4/16に終了した。
私は提出していない。


何らかのコメントを述べられるほど(現)常用漢字表や新常用漢字表(仮称)についての基礎素養を持ち合わせていないし、何よりじっくり見る時間も無かった。


ただ選定の根拠となったとされる「一般社会における出現頻度」についてはかねて思っていたことがあったのでこの機会に書いておこうと思う。


「漢字出現頻度数調査」は、書籍や新聞の他、ウェブサイトから抽出したものも対象としている。
ウェブサイトと言っても種種雑多あらゆるジャンルが含まれるわけで、どういう分野を調査対象にしたのかという辺りも明らかにしないと有意な調査結果として期待できないのではないか。対象の選び方によっては恣意的な選び方も出来てしまうのではないかという心配がある。


もう一つ、ウェブサイトを調査対象としたことについて、一般にウェブサイト上のコンテンツを作成(入力)するのは主だったところでWindowsMaclinuxなどの環境があるだろうが、こういったコンテンツに含まれる漢字というのは多分に日本語変換ソフト(Windowsで言えばIME)の影響が大きいのではないか。仮にコンテンツの作成(入力)環境としてWindows環境が最も多いと仮定した場合、そのデフォルト日本語変換ソフトであるMS-IME、つまるところはMicrosoftの仕様(変換辞書)が漢字の出現頻度に強い影響を与えているのではなかろうかという気がする。大多数の人はIMEが提案する変換候補の高い順(変換候補の上に来る順)で入力すると思われ、結果的に個人がどういう漢字を使うかを選ぶのではなく、IMEが提案するがままに、変換できたからいいや、といった具合で変換しているのではないのか。


単漢字変換や文字コード表で入力したならば、個人の漢字選択の思想が反映されもしようが、今のご時勢で単漢字変換など使ってる人などまずいないだろう。


そうなると頻度調査などというのは意味が薄れてしまい、市場に出回っている少数の日本語変換ソフトの辞書仕様をなぞるだけになってしまってはいないのだろうか。そんな調査結果に意味はあるのだろうか。


またウェブサイトに限らず2009年現在時点での一般社会での使用頻度、と言っても、その対象となる雑誌であれ新聞であれ、既に何らかの明示的あるいは暗黙的なレギュレーションに従った漢字の使用がなされており、つまりはそのレギュレーションを追認するだけという点で前述の日本語変換ソフトと同じ構造なのではないか。
既存のどんなレギュレーションにも影響を受けていない純粋なコンテキストなどそもそもありはしないのではないか。手書きを除いて。


取り止めがなくなってしまったが、要するに有意な出現頻度調査など今更やりようが無いのではないかということ。
現実を追認するという程度の意味しか為さない気がする。それでもコミュニケーションの円滑化に寄与するという目的に鑑みれば、公的なレギュレーションとして明文化して広く知らしめるということ自体はどんな形であれ有益なのかもしれないが。